現在は日記とssのみで進行中...

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君には分からないよ。
いつかスザクがそう言ったのと同じ調子で、ルルーシュはそう口にした。
おまえには分からないことだと、笑っていた。
歪んだそれは嘲りでさえなく、私を見てもいなかった。
いつかのスザクと同じ。
その理由を理解したのは、全てが手遅れになった後。
アッシュフォードのクラブハウス。ルルーシュが暮らしていたという部屋で見つけた古びた写真に打ち砕かれた。
端の切れて色褪せた最後の一欠けら。
破り捨てようとしてできなかったのか、半ばまで裂けた跡を裏側からテープで丁寧に直してあった。
几帳面に、思い出の一片までかき集めるように。
彼が繋ぎ合せて留めようとしたものの真ん中で笑う子供達。きらきらと、音を立てて零れる煌き。笑顔。
今よりもまだ大きな丸い瞳を猫の子がするよりも柔らかく、互いに伸ばした手はしっかりと繋ぎ合わされたまま。
ピントのずれた、見当違いのフレームワークは彼らの盲唖の妹の仕業だったのだろう。
探してもないわけだと、誰にともなく呟く。
スザクの部屋を、ロッカーを、記憶を、底に指が触れるほどかき回して探しても見つからなかったもの全て。
私がスザクに求めたもの全てが、そこに埋もれていた。埃を被って、二度と誰の手にも触れない場所へ隠されていた。
スザクの一番大切なもの。とうの昔に失くしたのだとばかり思い込んでいたもの。
だったら与えてやればいい。一緒に探しに行けばいいと舞い上がっていた。
薄っぺらな液晶の中、勝ち誇った笑みを私に向けるルルーシュに癇癪を起こす。
隣に立つスザクを網膜の裏側まで焼き付けながら、そいつを返せと喚いた。けれど。
掌に収まった小さな紙切れ。
握り潰してなかったことにしてしまえ。そう思うのに。
力を込めようとしてできなかった。
画面の中でまた。ルルーシュがスザクに触れる。
触るな。叫びたくて、声にならなかった。
映りこんだエヴァーグリーンに光が差して、翳りを消す。痛みが引いたように刹那揺らいだ。
ひらり、と。
指の間からすり抜けた写真が床の上に落ちる。
新皇帝の演説が淡々と畳み掛ける声が狭い部屋を震わせた。
冷たいパネルに取りすがる。
スザク、と目を凝らして呼んだ。
私を見ようともしない、見ようともしなかった男の名を呆然と呼んだ。何度も、何度も。
気が触れる。
――――君には、分からないよ
そう呟く瞳は遠くを見ていた。今は、すぐ隣を。
違う、スザク。その男が私からおまえを奪ったんだ。
違う、違う、ちがうちがう、おまえは、おまえのいるべき場所は。
耳を塞いで身体を折る。
思い出せないスザクの感触に震えた。写真の中で笑う幼い顔にさえ怯えて、蹲った。
アーニャに肩を叩かれるまで、テレビが既に他国の内戦へと話題を移したことにも気付かずに。
小さな手がひょいと写真を拾い上げる。ただの紙を掴みあげるのと同じ仕草。
目を瞠ったのは一瞬で、すぐにいつもの無表情を取り戻した。
そのままパチンとテレビを消して部屋を出て行く。
もうどこにもスザクの欠片は落ちていなかった。
ルルーシュの取り戻したかった世界。
スザクがいつだって戻りたがっていた時間。
分かったよ。分かってしまった。
おまえたちはいつだって互いしか見ていなかったのに、私は。私だけじゃない。妹達の純心さえ裏切っていたんだな。
させるものか。
だって、許されないことだろう?
込み上げる笑みに埋めたのは思い違いの恋慕だった。
この腕に抱いた屍を焼き尽くす。
殉ずることなど許さない。心中など、させるものか。
どんな手を使ってでも、永遠に一つになど。
私に取り戻すべきものの一つもないというのなら、奪えばいい。
例え、その命と引き換えることになったとしても。
***
ギアスが終わって以来、ずっとモヤモヤしていた気持ち。
心に穴が開いたような違和感。
ジノの視点で対スザクを見てみると、実はとんでもなくジノの片思いだったことに気付いて書いて見ました。
多分続く。
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