現在は日記とssのみで進行中...

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夜の間に一度世界は死んでしまったものらしい。
僕らが眠っている間に誰かが時を止めていたのだろう。
そうしておいて空が焦げ付くほどの炎で焼き尽くしたに違いない。
未だ赤々と火傷にのたうつ天涯がその証だった。
鳥の声一つしない。人の気配の一つもない。
時が止まったような鮮やかな黎明。
背後に控える夜の中では逃げ遅れた月が息を潜める。
時を止めたまま、螺子を巻き忘れた世界に、僕だけがいた。
世界が死んで、生まれてくる、その狭間に。
なるほど。世界はこうして一度死んで、僕らの知らないところで生まれているのだと。そう思えば力が抜けて、バルコニーの冷たい床に座り込んだ。
今なら何を叫んでも、誰にも聞き咎められることはないのだという誘惑が過ぎる。
けれど結局のところ、それは声にならず、言葉にならず、僕はただ世界の螺子がゆっくり巻かれていくのを傍観していただけだった。
どれくらいそうしていたのか。
長いと感じたけれど、相変わらず時は止まったままだったのだから、実際にはそうでもない程の時の後。
落ちてきた温かい腕の、痛いほどの抱擁にあっけなく静寂が絶たれて針が進んだ。
冷たくなってる、と彼は言い、その大きな身体で僕の四肢全てを丸め込んでしまう。
仕上げとばかりに長い指で僕の目を覆い隠して、いつもの我侭が始まった。
眠いよ、スザク。まだ眠い。なんて、子供の時分にだって言わなかっただろうに。
ベッドに戻ろう、スザク、もう一回温めてあげるから、とすぐ耳元で寝ぼけた声がした。
秒針の代わりに鼓動が背を否応なく叩く。
指の隙間から覗く光の洪水を、消えていく緋と藍の深みを、世界の終わりのその全てを目に焼き付けながら。
僕はジノの両腕をギュッと掴んだ。向き直って太い首筋に鼻先を埋めた。
離したくない。消えないで、と心から願いながら、こんな朝はもう二度と来ないと知っていた。
甘い声が額を擽って、僕に教えてくれる。
まるで生まれたての空だね、その言葉に頷いた。頷いたけれど、答えなかった。
僕は既に知っていて、彼は未だに知らずにいた。
そうやって世界は何度も死んでいるということ。必ず最後に。一日の終わりに焼け落ちる。
だけど僕らは知らぬ間に新しい世界を生きているんだ。
何事もなかったように、知らされず生きていくんだ。
昨日の続きと信じて歩いていく。二度と戻らない日の線を辿っているつもりで、けどそれは模倣だから、やっぱり少しずつずれて行く。
だから昨日あったものが今日はもう失われていたとしても不思議じゃなかったんだ。
なあ、スザク、と時のない真昼の空が映りこむ。
今日はずっとどこにも行かないで二人して眠ってたいな。その間ずっとおまえを抱き締めていたいんだけれど、どうだろう。
そんな、一応のご機嫌伺いに縋りついた。
覚えていてほしかった。覚えていたかった。
世界が死んでしまっても、明日には今日は過去なのだとしても。
明日のジノが今日の彼と違っていて、明日の僕が、今日の僕でないとしても。
巻かれた螺子の分だけ時が進んで世界が終わるのを知っていて止められないというのなら、せめて。
記憶も、思慕も、温もりでさえ。全部失くしたって構わないから、せめて、せめてせめて、どうして。
嘘じゃなかったんだと、今だけでも、どうか。
「スザク・・・スザク、」
ジノ。心の中でもなく、夢の中でもなく、長らく閉じていた目蓋の向こうにその姿を探す。
ぼんやりと歪む視界で影が揺らいだ。
一瞬躊躇った指先は細く尖って、冷え切っていた。
ジノではないことを意識よりも前に、触れられた頬の膚が訴える。
「スザク、泣いて、たのか?」
余所余所しい仕草は建前で図々しく踏み込んでくる言葉。
瞬きで膨れ上がった水膜を振り解けば、陰鬱に翳った紫玉が映った。
見慣れた旧友の顔には偽りのない労りが見える。
何度かは僕を本当に葬ろうとした男の暗澹の欠片を探そうとして、ふと力の抜けるのを覚えて止めにした。
そんなことは無意味だ。
ルルーシュにしたって、昨日のルルーシュではないのだろう。僕がそうであるように。
上手く微笑んだつもりがぎこちなく終わる。
自覚が訪れたのは、ルルーシュの白い顔が緊張に強張ったからだ。彼は未だに怯えている。過去の記憶と信じるものに。そこでは僕らは確かに憎みあってさえいたのだから無理はない。
ああ、苦しいのかと。
誰にも伸ばされることなく握り締められた掌を見下ろして、漠然と知った。
握ってやることはできた。
だけど僕は気付かない振りをして大きく切り取られた窓の外へ首を傾ける。
誰かが螺子を巻いている音を聞いたから。
すぐ傍をコマドリが飛び去ったというのにその羽音はなく、代わりに羽ばたく様が異様に近くに見て取れた。
吸い込まれ消えていく華燭の空が一斉に光をかき集めるまで見送って、眩しさにそっと目を閉じた。
思い出すのは、同じ色の違う世界。
泣いてしまいたいほど美しい朝だった。今日と同じ、今日とは別の。
あの時から、分かっていたんだ。
それは二度とは戻らない、世界の終わり。
だけど悔いはないんだ、ジノ。
だって、あの日の僕は、きっと今でも君と、
End of the world
***
24話見ました。見て、これ。か、感想??
こういうふうに考えれば、納得いかないかなぁと、うん、いかないねえ。あれええええ。
しかし本当に思ったことある。あんまり夜明けの空が綺麗過ぎて、「これ、世界の終わりじゃん」って思ったこと。
でもこのスザクの考えでいくと、その時々の感情なんて無意味で、記憶なんて端から歪んでることになるなあ。
ああ、明日が怖い。もうスザクが生きてればそれでいいや。できればジノスザエンドがいいけどね☆
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