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そして、恋が始まる。の6です。


シュナ様視点一人称です。
何やら雲行きが怪しいです(エロとかでなく)。
この話の着地点が自分でも分かりません(頑張れ)。
スザク出てきませんでした。
でも、殿下がスザク大好きです(またか!)。

もっとライトな感じを目指してたのに・・・あれ。

read moreからどうぞ~。

 






―――――前略、父上様

いろいろと考えた結果、僕はブリタニアに帰化したいと思います。
王位継承権は神楽耶に譲るので、父上は何も心配しないでください。



・・・至ってシンプルな手紙だった。

手紙、というよりは通知だろうか。
ノートを破いて走り書きしたような文字と、そのあまりな内容に思わず苦笑してしまう。
それを聞きとがめたのか、モニターの向こう側から激したような声が返った。
「何が可笑しい!これはいったいどういうことだ!!」
押し付けるように画面いっぱいに広げられていた手紙が翻され、代わりに、怒りで額の端まで赤くした男が姿を現す。
支配者らしき傲然とした風体にはそれなりの貫禄があるが、その直情的な物言いは彼がいかに小者であるかを示していた。

男の名は、枢木ゲンブ。
ブリタニアにとっては貴重な極東の同盟国の王であり、スザクの父親でもある。
不逞に扱うわけにもいかぬ、どうにも厄介な男だった。

「申し訳ないが、私ではなく、王子殿下に直接お聞きになる方がよろしいのでは?」

公務用の笑みを浮かべて言えば、いっそ突き刺すような鋭い眼光を寄越される。
スザクが父親に対して萎縮しているのは何となく感じてはいたが、これでは無理もない。
押し付けることしか知らぬ男からは、スザクに対する一片の親愛も拾いあげることができなかった。
あるのは、思い通りにならぬものへの憤怒と侮蔑。
己の権力のための道具としてのスザクしか見ていないのだろう。
不遜な態度で鼻を鳴らした枢木ゲンブは、「無論」と当然のように言い放つ。

「そのつもりだ。早急に貴国を訪問させていただこう」

非公式に、と求められて、すぐには返答できなかった。
政治的にも非常に微妙な問題を含んでいることもあったが、それ以上に個人的な感傷が先立つ。
それは許されることではないと分かっていても、どうにもこの男のもとへスザクを引き渡すような真似はできそうになかった。
渋るように押し黙っていると、その顔に今度は不審の色が深くなる。
明らかな敵意を向けられて、これ以上はと先に口を開いた。

「・・・分かりました。では手配をしましょう」


この時、予感はしていたのだ。
これは両国を巻き込んだとんでもない醜聞になるであろうことは・・・――――















そして、恋が始まる。(6)















一日目は、都合がつかないのだろうと思った。

二日目には、機嫌を損ねたのかと訝り、それでも三日ともたずに顔を出すだろうと踏んでいた。
それが今日で五日目。


すっかり冷めた紅茶を一口飲んで、その渋さに顔を顰めてカップを置いた。
柱時計に目をやれば、既に夜の八時を過ぎている。
(今日はもう来ないだろう・・・)
知らず溜め息を零して、控えていた下女に声を掛けた。
テーブルの上に並んでいたマドレーヌやチュイールが手際よく片付けられていくのを見ていると、堪らない気持ちになってくる。
鬱屈とした苛立ちと、理由のない胸の痛み。
どうにも慣れぬ不可解な感情に、ここ数日振り回されていた。

「今日も・・・いらっしゃいませんでしたね」

不意打ちのように言われて顔を上げると、台車にティーセットを収めた下女が苦笑を浮かべる。
そういえば、彼女はスザクが来る度、あれこれと世話を焼いていたのを思い出す。
同じくらいの歳の孫がいるのだと言っていたから、きっとそのせいだろう。
「忙しいのかもしれないな。新学期も始まったようだし・・・生徒会の方も・・・・・・」
「・・・殿下?」
言葉を切ったのは、彼女に向けていたはずの言葉が次第に自身に言い聞かせているように聞こえたからだった。
「・・・あの子にはあの子の付き合いがあるのだから、何も無理をして私の相手をすることなどないさ」
学園にはルルーシュやナナリー・・・それにユフィーもいて、そこには17歳のスザクに相応しい居場所があるのだ。
歳も近く、身近な存在である彼らと過ごすことの方が、余程自然で好ましい。
私といても、せいぜい勉強を見てやるくらいのことしかできないのだし、彼らの年頃に好むような面白い話の一つもできるわけではなかった。
むしろ、私といて何が楽しいのかと不審になるばかりだ。
それでも、砂糖菓子が溶けるように笑うスザクを見ているのは嫌な気がしなかった。
気が付けば、あの子の駆けて来る足音を探している自分がいる。
今にもそこの扉を勢いよく開いて顔を覗かせそうなものだというのに。

「アレがいないと静かなものだな・・・」

まるで、全ての音が途絶えたように。
五時が六時になって、そのうちに七時になっても気付かない。
完成された空間のように、スザクが訪れなければこの部屋は時を刻まなくなっている。

「お寂しいでしょう?」

不意を突くように。
彼女の言ったその言葉は、不思議なまでにストンと落ちてきた。
霧がかかったようにぼんやりとしていた感情が、その上に形をなしていく。
「・・・そう、見えるのか?」
もしそうならば、・・・問題だ。
こめかみに手を添えて確かめるように訊けば、何故かとても柔らかな微笑が返ってくる。

「会いに行かれてはいかがですか?」

それは抗いがたい誘惑だった。







「そんな理由で~?事前連絡もなしで第二皇子殿下自ら、足をお運びいただいたんですかあ~・・・」


出し抜けに皮肉った口調で出迎えるロイドは、口ほどにも覇気がない。

元々顔色がいいわけではないが、今はいっそう青褪めて見える。
「どうかしたのか?」
ようやく通してもらえた居間に腰を落ち着けて振り仰げば、向かい合ったソファーにだらしなく沈みながらも睨みつけられた。
黙っていれば、柔らかな線が美しい顔をこれでもかというほどに歪曲して。
「・・・だいたい、あなたのせいでもあるんだよねぇ・・・」
セシル君は一人で十分なのにさ、と子供のように癇癪を起こす。
論理に忠実な彼が爆発するのは何度か目にしてきたが、そういう場合は須らく、彼にとっては理不尽な事態が起こっているのだ。
スザクを預かってからは頻度が高くなっているようだが、むしろそれはよい兆候だと思っている。
いつも最後にはロイドが折れて、その度少しずつではあるものの、打ち解けているように見えた。
本人に言わせれば、「僕にはスザクくんの行動様式を理解することはできないよ。けど、嫌いじゃないんだ」ということらしい。
スザクの矛盾は心地いい、と。
そう公言しているロイドが、今更何を癇癪することがあるのかと窺っていると、まるでよくできた舞台装置のように間合いよく扉が開いた。

「あ゛・・・」

苦い声を出したロイドがかつて見たことのない速度で姿勢を正す。
明日は雨だろうか、などと考えながら視線を移して・・・全てに合点がいった。
(確かに、セシル嬢並に手強いな・・・)
海松色の軍服を型通りに着た長身の腰には黒い鞘に収まった日本刀が据えられている。
一分の隙もないその居住まいは歴戦の勇士の名に相応しいものだった。
藤堂鏡志朗・・・若くして枢木ゲンブの側近であり、スザクの教育係でもあった彼がここにいる目的は一つしかない。
枢木ゲンブの到着まで、スザクの逃亡防止と監視をしているのだろう。
「なるほど、正攻法ではダメなようだ」
独り言のように布告すれば、藤堂の帯びる空気がより剣呑なものになる。
「シュナイゼル殿下。子供だからとあまり無体なことはやめていただきたい」
「無体?約束をふいにされているのはこちらだというのに?」
「・・・っ」
ギリ、と歯軋りの音が聞こえてきそうだった。
もし、立場が逆であったなら、既に命はないだろう。
しかし、軍人という立場が藤堂を縛っている限り、彼の手が刀の柄を取ることはない。
どれほど、スザクを大切に思ってはいても、国是には代えられない。
もし、藤堂が寸分でも刀に触れれば、その瞬間にブリタニアと日本は戦端を開くことになるのだから。
個人の感傷で失うには手に余るものであることは、歴史が証明している。
ただ、それは私にしてみても同じではあったが・・・。

「どうやら出直した方がよさそうだ・・・ロイド、今日は失礼するよ」

私が席を立つと、いつもは早く帰れと言わんばかりに喜ぶロイドが「えぇっ」と非難がましい声を立てた。
「もう帰るんですかぁ?」
藤堂とセシル嬢の間に挟まれたくはないという懇願が滲み出ている。
こんな時ばかりしおらしく振舞われても、相手がロイドというだけで効果はなかった。
「スザクに会えないなら、ここにいる意味はないからね」
「・・・そんなことばっかり言ってると、絶対そのうちスザクくんに捨てられますよ!」
彼にしては理の通らぬことを恨みがましく怨念を込めて言われる。
これもスザクの影響だろうか。
不吉だな、と笑いながら扉の前まで足を運んで、立ちはだかるように立っている藤堂の隣を抜けた。
完全に背を向けあった、その瞬間。
ガシャン、という荒々しい音が響き、ロイドが大袈裟に壁に張り付くように飛びのいた。

「・・・シュナイゼル殿下、」

低く押し込められたような、切迫した声に追いかけられて振り返れば、藤堂が片膝を床について頭を垂れていた。
「どうか、これ以上スザクくんの立場を悪くしないでいただきたい」
床に置かれた刀が、それを彼個人の思いだと告げる。
軍師としてではなく、スザクの行く末を案じる者として。
それだけに、藤堂の言葉は・・・痛みを伴って降りかかった。
「彼は兄弟もなく、父母との縁も薄く、人の情に飢えている・・・どうか、それを弄ぶようなことだけは・・・!」
藤堂の言うことも分からないわけではない。
そんな不器用なスザクだからこそ、可愛いと思うのだ。
それを人に何と罵られても、今更。


「彼に恋をしているのは、私の方だよ」


スザクの勘違いに付け込んでしまいたいのは、初めから、私の方だった。
親愛の情と恋慕のそれで区別のついていない子供を前にして、どれほどの時をただ待っていたか分からない。
スザクがもっと多くの人と出会い、己を知って、その上で、私を選ばなければ意味がないと思っていたからだ。
それでも、本音を言うならば、彼が初めに「恋をしたい」と言い出した時に、そのまま奪ってしまいたかった。
それができないならせめて、スザクの望むままにと。

予期していなかったように驚愕に目を見開いてる藤堂に再び背を向ける。
追ってくる声はもうなかった。

代わりに門扉を出るなり、ロイドがふざけて凭れかかるような振りをして、耳打ちを寄越す。
「明日は生徒会で遅くなるらしいよ~・・・って。今決めちゃったんだけどさ~」
セシルくんに言わないとねえ、としたり顔で旧友・・・改め、悪友が笑った。
不器用なのは、この男にしても同じなのだ。
もっとも、可愛いかと訊かれれば、迷わずに否と言えるが・・・。
「・・・そんなことばかりしていると、スザクに捨てられるんじゃないのか?」
先刻の言葉をそのまま返すと、妙に自信満々に「残念でしたぁ~」と首を振る。
「僕とスザクくんはもっと深ーい仲なんだよね~」
全くもって嫉妬すら湧かないその激励に思わず笑うと、「なんで笑うの」と膨れ面になった。
こんなにも友の存在に感謝したことはない。
百の励ましよりも簡単に背を押される気がした。


踏み出す一歩は、ようやく始まる、その恋のために・・・。














***

殿下の方が実は恋に落ちてました(オイ)。
うちのシュナ様、そんなんばっかりか・・・!


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